ワタシは、アダルトチルドレン・・・。
母との確執がきっかけで、自分は誰よりも幸せな人間なんだと信じて歩んできた人生が、ごまかしの人生だったことに初めて気づいたワタシ。
アダルトチルドレンのことをもっと知りたくて、アダルトチルドレンについて詳しく書いてある本を買い繰り返し読んだ。
本のページをめくる度に、ワタシがアダルトチルドレンだということが証明されていく・・・。
心の底にしまっていた怒りや寂しさがとめどなく沸き上がり、あの頃は昼も夜も泣いてばかりいた。
真実と向き合うこと、自分と向き合うことが、こんなにも辛く苦しいものだったなんて・・・。
でも、この辛さを乗り越えないとワタシに本当の未来はない。
ワタシは、乗りかかった船にそのまま乗り続ける覚悟を決めた。
他人からは”いい人”に見える両親
ワタシは、5人家族の長女として育った。父、母、2人の妹。
末っ子の妹は、ワタシより11歳年下。つまり、ワタシが小学校5年生までは4人家族だったことになる。
父は、父の実兄が経営する自動車修理工場で専務として働き、母は、母の実父、つまりワタシの祖父が経営する食品会社で、ワタシが小学校を卒業するまで働いていた。
父は、漁船を所有するほど若い頃から釣り好きで、平日は夕方から、休日は1日中、海が荒れてない日以外は、今でも毎日釣りに出かける。
母は、趣味や人づきあいは少ないが、手先が器用で手芸や裁縫が得意。
父も母も人当たりが良く、真面目に仕事をする親切な性格の持ち主。
誰もが疑わない”いい人”たち。
でも、ワタシの両親は、ワタシが今まで誰にも打ち明けることのなかったある事情を抱えていた。
酒を飲むと人格が変わる父親
父は、何もなければマイペースで優しく面白い父。
何もなければ・・・。
父が豹変するのは、いつも晩酌の時間。お酒を飲んだ時だった。
普段は釣りでほとんど家にいない父だったが、天気が悪い日や海が荒れている日は釣りに行くことができず、夕方の早いうちから決まって家で晩酌をした。
ワタシの父は、本人が気づいていないだけで、れっきとしたアルコール依存症。
アルコールが入ると人格が変わる。饒舌になり大胆になり、必ず子供に絡む。
普段は気にもかけてない学校のこと。勉強のこと。子供なら面倒くさくて話したくないようなことを酒の勢いでしつこく聞いてきた。
ワタシや妹がきちんとと受け答えをしないと、暴言をはいたり、説教が始まることもあった。
ワタシには、父が酔っぱらいながら、いつも同じような話を繰り返し話していた記憶しかない。
たまに父と囲む食卓は、いつも居心地が悪く、食事を早めに済ませて父から離れるのがワタシと妹の定番行動だった。
祖父に忠実でありつづけた母親
母は、我慢の人だった。
酔っぱらうと暴言を吐く夫に尽くし、文句も言わず、仕事をしながら家事や育児をいつも淡々とこなしていた。
しかし、母が我慢をする相手は、夫や子供たちだけではなかった。
母は、母の実父、つまりワタシの祖父から、自分の家族ができた後も多くのことを強要され続けた。
中でも、ワタシたち家族の心をいつも揺さぶるものがあった。
それは、祖父が信仰していた宗教だった。
終戦後、シベリアから帰還して事業を立ち上げた祖父は、何度も失敗を繰り返した挙句に多額の借金を抱えた。
祖父は思い悩み、とある宗教にすがった。入信後、たまたま事業が好転したからか、祖父は宗教にますますのめり込んだ。
信者になれば、幸せが約束される。
祖父の真っすぐな性格が災いし、ワタシの祖母や母だけでなく、祖父の身内はことごとく信者にさせられた。もちろん、ワタシたち子供に反論の余地などあるはずもなく。
しかし、ワタシの父だけは違った。宗教という存在を全く信用していない父は、母が宗教活動に参加することにいつも猛反発した。
厳しい祖父に逆らえなかった母は、宗教に反対する父に隠れて、ワタシたち子供を宗教活動に参加させるようになった。
宗教活動に参加する度に、父に嘘をついて出かけなければならなかったワタシと妹。
酔っぱらって暴言を吐く父は大嫌いだったけれど、父に嘘をつく時だけは後ろめたさを感じずにはいられなかった。