父はアルコール依存症。
母は、いつまでも実父に逆らえない従順な娘。
酔うと暴言を吐く父からタイミング良く逃げる子供たち。
祖父が信仰する宗教活動に母と妹と参加する時は、遊びに出かけると父にウソをつく。
家族みんなで囲むはずの食卓は、いつも妹と2人きり。
親子の会話は平日も休日もほぼゼロで、大人も子供も、平等に与えられた一日をバラバラに生きる。
それが、ワタシたち家族の日常だった。
酔っ払った父の暴言をあびて落ちこむ母をなぐさめ、実家に入りびたる母に憤る父の味方をし、両親の機嫌を常に察して家族の安定をはかる従順な長女。
そんなことを毎日繰り返しているうちに、長女のワタシは子供としての生き方を忘れていった。
ワタシの家庭には、無心に甘えさせてくれる親も、本音をぶつけさせてくれる親も、安全地帯を提供してくれる親も、心から信頼できる親もいなかった。
両親は、いつも自分に夢中。信じてもすぐに裏切られる。
それでもワタシは、自分の家族が一番幸せなのだと信じて疑わなかった。
寂しさを感じないはウソ|本当は心のどこかに閉じ込めているだけ
父親のアルコール依存、宗教、家族間の秘密、歪んだ愛情。
幼少期に、子供として生きる時間を奪われた子供は心の成長が止まるそうだ。
個人差はあるけれど、ワタシの心の成長は、小学生の時にはすでに止まっていたのだろう。
受け流すようになった寂しさの感情は、知らないうちに、心の奥底のフタつきバケツの中にギュウギュウとたまっていき、いつからか、ワタシに生きづらさという信号を発信するようになった。
もちろん、そんなフタつきバケツの存在など、幼かったワタシが知るはずもない。
その存在を初めて知ったのは、ワタシが35歳の時。母が、ワタシとの約束を破った時。
フタつきバケツに何十年もためこんでいた寂しさの感情が、ついにマグマと化し、開かないようにしっかりと押さえつけられていたバケツのフタをポーンと吹っ飛ばした時なのだから。
ワタシの心と身体をむしばんだもの
愛が欠けた家庭生活は、ワタシが小学生の時にはすでに、ワタシの心だけでなく、身体までむしばむようになっていた。
身体の不調、盗み、いじめ・・・。
ワタシの問題行動が目立つようになったのもこの頃からだった。
でも、ワタシが母から本気で怒られたのはたった1度だけ。ワタシが起こした問題行動は、母の心の中でいつも勝手に消化され、そのうち忘れられた。
一家の安定剤に仕立てあげられた長女のワタシ。父と母が絶対的に信頼する存在。ワタシが問題行動をおこしても、うやむやにされ、無かったことにされるのがいつものパターンだった。
ワタシはそれを、長女の特権と勘違いしていた。心の奥深くに漂う寂しさの存在に気づくこともなく。