母からの身体的虐待は数えるほどしかなかったが、父からの身体的・精神的虐待は、ワタシの心に今でも大きなトラウマを残している。
父から繰り返されていた虐待。
それは、からかい、冗談、悪ふざけ。そんな些細なことの積み重ねだった。
あからさまな性的虐待や暴力はなかったものの、愛情不足で育ったワタシにとって、父からの歪んだ愛情は、いつも悲しくて悔しくて切ないものだった。
父の悪ふざけの中で一番忘れたい思い出
父は、お酒を飲まない時は面白くて優しい人。
子供たちを両腕にぶら下げて遊ばせてくれたり、釣りに連れて行ってくれたり、凧あげ大会の凧を一緒に作ってくれたり。
数は少ないが、楽しい思い出がなかったわけではない。
しかし、父には子供をからかって喜ぶという悪い癖があった。
ワタシの中で一番最悪な思い出は、父から電気あんまをかけられたこと。2、3回ぐらいだったか、ワタシもワタシの妹たちも、電気あんまの犠牲になった。
最近知ったことだが、男にとっての電気あんまは遊びのうちの一つとして、むかしは誰もが経験したらしい。
それを知って、気持ちが少しは楽になったものの、電気あんまはワタシにとって性的虐待にしか思えず、自分の記憶から抹消してしまいたい最悪な思い出だ。
父の悪ふざけのピークはワタシが小学生の時
父のからかいは、我が家の日常だった。
ある日、ラーメンを食べに行こうと父に誘われ、父、ワタシ、妹と3人で車に乗った。
その時、何か忘れ物をしたので取りに行くよう父から言われ、ワタシだけ車からおりて家まで引き返した。
忘れ物をもって車まで戻り、車に乗り込もうとした時、なぜか車が発進。父は、ワタシが車に乗り込もうとすると車をゆっくりと走らせた。
ワタシが走って車に乗り込もうとすると、父は車のスピードをあげた。その時、運転席の父は笑っていた。
結局、ワタシが怒って泣きながら家に帰り、その日は、ワタシだけでなく、父も妹もラーメンにありつけなかった。
他にも、子供が電気のついていない暗い部屋に行くと決まって後ろから大きな声を出して脅かす。
朝に、口にキスをして起こしてくる(これは本当に嫌だった)。
車を急に止めて、道にお金が落ちていたから拾ってこいとウソをついて子供に取りに行かせる(これは、ワタシの従妹が父の犠牲になった)。
父にとっては全て大したことのない悪ふざけ。
でも、あの頃のワタシの心の中は、父を大好きな気持ちと、父を憎み恨む気持ちがいつも入り混じっていた。
父の悪ふざけの代償~ワタシの身体に記録されたトラウマ
普段は、仕事や釣りで家を空け、家にいる時は酔っ払い。
父の愛情がほしくてたまらないとせがむ子供に、父はいつも悪ふざけでしか応えてくれなかった。
父の悪ふざけは、子供の身体にちょっかいをかけたり、大きな声で脅かしたり、酔っぱらっていやらしい言葉を言ったりするもので、子供が求める父親の愛情とは大きくかけ離れたものだった。
いつしか、ワタシの身体は家にいても緊張でこわばるようになった。
酔っぱらって、嫌なことを言い出すかもしれない父に身構える。
ワタシが自室で何をしているかをそっと観察しにくる父の忍び足の足音を、聞き逃さないように常に息をひそめる。
当時、記録された身体の緊張はワタシのトラウマとなり、ワタシがどんな状態にあっても未だにほぐれることはない。