酔っぱらった父とケンカをする度に、母は車の中でこっそり泣いていた。
母は、時々疲れがたまって寝込むことがあった。
妹が高校生になりグレた時は、心労がたたり、母の頭頂部から沢山の髪の毛が抜けおちたこともあった。
そんな母の姿をいつも目にしてたせいか、母は、弱い存在。
ワタシが守らないと壊れてしまう。
長女のワタシは、そう感じるようになっていた。
だからこそ、ワタシは、母にとってずっといい子であり続けなければならなかった。大好きな母を悲しませることは、絶対にできなかったから。
持て余したワタシの寂しさと怒りは妹へと向かった
父も母も、ワタシが求める愛情はこれっぽっちもくれないのに、子供のワタシは、親に愛情を与え続けないといけない。子供の心は、親の心を守り続けないといけない。
なぜなら、父と母は、心が弱い人間だから。ワタシがいないとダメだから・・・。
親子間の矛盾した愛の形は、やがて大きなひずみとなり、自分でもワケのわからない怒りが、家庭で一番弱い立場の人間に向けられるようになった。
それは、3歳下の妹だった。妹がいるせいで母を独り占めできない。母の愛を独り占めできない。
妹が憎い・・・。
ワタシの寂しい感情は、見えない暴力となり、妹の心を傷つけるようになった。
家庭で独裁者と化したワタシが妹に与えた恐怖
両親の親代わりだった優等生のワタシは、いつしか家庭内で絶対的な存在となっていた。
そのため、ワタシから妹へどんなに理不尽なことをしても、ケンカになることは一度もなく、ワタシが親から咎められることもなかった。
ワタシは、それをいいことに、ワタシが高校を卒業して家を出るまで、自分のモヤモヤする感情をずっと妹にぶつけ続けた。
ワタシは、自分が妹にした仕打ちを今でもすべて覚えている。
なぜなら、妹にひどいことをする度に心が痛んだから。妹が悲しい思いをしてることを知っていたから。
本当は、妹が好きだったから。
でも、ワタシはあの家にいる限り、あの家族の一員でいる限り、優しい姉になどなれなかった。
ワタシにまっすぐな愛情をくれる人も、本気で叱ってくれる人も、あの家にはいなかったから。
今も残る妹への後悔と繰り返される悲劇
ワタシは、今でも後悔している。
あの機能不全家族から、姉として妹を守れなかったことを。
愛に確信がもてないという不安。姉からの理不尽な仕打ち。あの時、3歳下の妹は家庭内で一番の犠牲者だった。
それでも、ワタシがひどいことをした後でさえ、妹は、いつも優しくワタシに話しかけてくれた。
でも、そんな出来事の繰り返しが、小さかった妹の心にダメージを与えないはずがなかった。
ワタシたち家族が踏みにじり続けた妹の心はボロボロになり、妹が高校生を過ぎた頃から、妹の心や身体が異変を起こし始めた。
その異変は凶器に変わり、やがて末っ子で三女の妹に絶望をもたらすのだった。