普通の愛情ある家族に生まれていたら、大人になってから、ワタシたち姉妹の仲がここまでこじれることはなかっただろう。
ワタシたち姉妹は、姉のワタシ、3歳下の妹、11歳下の妹の三人。
3歳下の妹は、ワタシが物心ついた時から一緒で、11歳下の妹は、ワタシが小学5年生の時に生まれた。
ワタシの心のゆらぎは、小学5年生の頃から始まったので、家庭や学校で感じていた生きづらさに加えて、新しい家族ができたことも少なからず影響したのかもしれない。
小さな寂しさの感情は、三姉妹それぞれの心の奥でどんどん膨らみ、やがて、ワタシたち姉妹の仲を破壊してしまうまで増大するのだった。
機能不全家族~長女の場合~
ワタシは、思春期に入ってからますます自分の殻に閉じこもるようになり、心の中で腐敗した寂しさの感情が、たまに怒りとして爆発することもあった。
その怒りをぶつける対象。それは、家族で一番弱い立場の3歳下の妹だった。
身体的な暴力をふるうことはなかったが、言葉の暴力や無視で、妹の心をたくさん傷つけた。
もともと、機能不全家族で育った愛情不足のワタシたち。
容姿をからかったり、馬鹿にしたり、自分はスゴイのだと自慢したり。自信がすり減った上に、追い打ちをかける姉から妹への言葉。
ワタシは、とんでもなく弱い自分を強く見せ、長女としての力を誇示することで自らを保っていた。
大人になってからも、ワタシはたまに会う度に次女や三女に同じことを繰り返した。
その言葉や言動が、妹たちをどん底に突き落としているとも知らずに。
機能不全家族~次女の場合~
次女は、長女のワタシと過ごした時間が長い分、ワタシとは異なる種類の傷を心に負ったのだろう。
母の強いすすめで推薦入学をした高校では勉強についていけず、悪い友達グループに入ってグレはじめた。
しかし、心が純粋で悪くなりきれなかった妹は、入学して数か月後には悪い友達グループから干され、高校も離脱。
その後は、母に振り回されながらも、自分の道を見つけていった。
そこまではよかった。
でも、機能不全家族のトラウマ、高校のトラウマ、職場でのトラウマ・・・。トラウマが積み重なった心のまま、仕事の激務で酷使した妹の身体はついに壊れた。
原因不明の腹痛、円形脱毛症、バセドウ病。今でも心がゆらぐと、円形脱毛症が再発する。
妹は、結婚して、その後離婚。
機能不全家族から愛情をもらえなかった妹が、心から人を愛せるはずがない。だって、誰も愛し方を教えてくれなかったのだから。
妹は、世間体をすごく気にするだけでなく、人と同じ幸せをつかまないと負けという気持ちを異常なほど強くもっている。
だから、経済的に安定した公務員を選んで結婚した。だから、子供を生んだ。
そこには、愛も幸せもないのに・・・。
そんな形だけの夫婦関係がうまくいくはずもなく、妹の結婚生活は10年足らずで終わりを告げた。
機能不全家族に育ったことを自覚したワタシは、妹に生きづらさを捨てて純粋な幸せを手にしてほしくて、大人になってから一度だけ、自分の本心を妹にぶつけた。妹が離婚する半年ほど前のことだったと思う。
それから、妹は、ワタシと距離を置くようになった。
機能不全家族は、世代に受け継がれて連鎖する。
妹の子供たちの人生が、ワタシたちと同じような生き方にならないことを心から願うばかりだ。