ワタシは、他人を簡単に信じることができない。
赤の他人はもちろん、仕事仲間や友達、家族までをも信じられずに疑ってしまうことがある。
その原因は、ワタシが育った家庭環境にあった。
日常的に秘密が存在したワタシの家庭。
やっかいなことは隠してしまえばいい、そのためならウソさえついてもいい。
その教えの首謀者は、ワタシの母方の祖母で、ウソをつく対象は、ワタシの父や母方の祖父だった。
母や祖母は、自分たちにとって都合が悪いことを隠すため、ワタシや妹たちをウソの共犯にした。
家庭の平和を守るためについた沢山のウソが、子供たちの心を打ちのめしているとも知らずに。
ワタシの家庭で頻発したウソの嵐
ワタシの家庭で頻発した秘密は、大きく分けて2つあった。
1つは、宗教活動を隠すための秘密。もう1つは、都合の悪いことを隠すための秘密。
母もワタシたち子供も、祖父母が信仰していた宗教に信者として登録されていたので、定期的に行われる宗教のイベントによく参加をさせられた。
信者がそろって観光バスにのり、遠出をすることもあった。
イベントに参加する日は、母は父に、別の用事で出かけると決まってウソをついた。
宗教イベントに参加するなどと父に伝えれば、宗教活動に猛反対している父が怒り狂うに違いないからだった。
「今日はお父さんの機嫌がいいから、明日、宗教イベントに参加してくるって伝えてみたら?」
過去に一度だけ、ワタシから母へそう伝えたことがあった。
母もその気になり、翌日の宗教イベントのことを父に伝えたとたん、
「お前らみんな、バスが事故って死んでしまえ」
と、父から暴言を浴びせられた。
そして、もう1つの秘密。
物事を、自分の思い通りにすすめるために、祖母が祖父にウソをつく。母が父にウソをつく。母が子供にウソをつく。
これは、どこの家庭でもよくある秘密なのかもしれない。
昔は、家庭に波風を立てないための主婦の知恵だったのかもしれないが、父や祖父にウソをつく度に、ワタシの心はいつもチクリと痛んだ。
人を信用できないことは辛くて苦しいこと
子供のころからウソが横行した家庭。
ワタシは、自分の持ち物が無くなると、妹が盗んだのではないかと疑い、母と妹がコソコソ話をしていると、ワタシの陰口を言っているに違いないと疑う人間になった。
人と人とのコミュニケーションは、信頼関係があってこそ成り立つものなのに、ワタシは、自分以外の他人を信用するという根本的な心が子供のころにかけてしまったのだ。
他人との距離が一向に縮まらない・・・。
家族すら信じられない人間が、他人を信じられるはずがない。
他人を心から信用できないことも、ワタシの生きづらさの原因につながっているのだろう。
家族間に秘密が多い家庭はいつか滅びる
家族に秘密が多くなった原因。
それは、家族間の対話が圧倒的に足りなかったから。
祖父と祖母、祖父と母、父と母、父母と子供たち。
傷つくことを恐れずに、自分たちの本音をちゃんとぶつけ合ってさえいれば、家庭に秘密が横行することはなかったし、家族の愛情を深めることもできたのではないか。
ワタシの3歳下の妹は、幼少期からの秘密を作るクセを引きずり、夫に小さな秘密を重ねるうちに、お互いを理解し合えないまま、結局離婚してしまった。
ワタシにも、家族に小さなウソをつく習慣が染みついていて、実家の宗教のことや自分にとって都合が悪いことを隠すために、夫にウソをついたことが何度かある。
しかし、家族間の秘密が、家庭を壊すこともあるのだと気づいてからは隠しごとをしなくなった。
せっかく手に入れた、自分の愛情ある家庭を守るために。